骨粗しょう症とは

骨粗しょう症のイメージ写真

骨粗しょう症は、骨が脆くなってスカスカになってしまう状態です。
年を取るにつれてカルシウムが不足したり、運動不足が続いたり、喫煙、お酒の飲みすぎ、閉経による女性ホルモンの減少などが原因となってリスクが高まっていきます。

骨粗しょう症になると、わずかな衝撃でも骨折をきたしやすくなり、骨折リスクが高くなってしまいます。このような骨折から要介護状態になる人も多いため、出来るだけ早い段階から対策を講じるようにしましょう。

治療と生活改善で骨折リスクは減少

骨量は20~30歳頃の若い時期をピークに、年を重ねるとともに減少していきます。これに伴って単位体積あたりの骨量も減少していき、背骨が体の重みでつぶれたり、背中や腰が曲がったり、背中が痛んだり、骨の変形による圧迫骨折をきたしたりします。ちょっとした転倒で骨折するといった事態を引き起こることも少なくありません。なかでも足の付け根の骨を骨折したりすると、体を支える働きが損なわれてしまうため、要介護状態にもなりかねません。
しかし、専門的な治療や適切な生活改善を行えば骨密度の減少を改善し、骨折リスクを大幅に減少させることが可能になります。

女性は60歳になる前に検査を

高齢の女性を中心に、骨粗しょう症は年々増加の一途をたどっています。更年期を契機として女性ホルモンの分泌が低下すると、特にリスクが高まります。女性ホルモンのエストロゲンには、骨の新陳代謝に際して骨吸収を緩やかにし、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きがあります。
閉経して、このエストロゲンの分泌量が減少してきますと、骨吸収のスピードが速まるため、骨形成が追いつかず、骨がもろくなってしまうのです。そのため、60歳になる前に一度は骨粗しょう症の精密検査を受けるよう、お勧めいたします。

FRAX®による骨折リスクの診断

FRAX®は、世界保健機関が開発した骨折リスク評価法です。
40歳以上の方を対象としてこの評価法を用いると、被評価者の今後10年間の骨折リスクが診断できます。
世界保健機関のFRAX®に基づいて12の質問に答えると、自分自身の10年以内に骨折する確率が、自動的に算出されますので、一度、チェックしてみると良いでしょう。

FRAX®チェック項目の中には「大腿骨頸部の骨密度」もあります。
これは体格指数(BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m))を入力しても判定が可能であり、骨密度を測定する必要がないので、簡便に算出できます。

FRAX®の12の質問項目

  1. 年齢
  2. 性別
  3. 体重
  4. 身長
  5. 骨折歴
  6. 両親の大腿骨近位部骨折歴
  1. 現在の喫煙の有無
  2. 現在のステロイド服用、あるいは過去3ヶ月以上にわたる服用の有無
  3. 関節リウマチの有無
  4. 1型糖尿病、甲状腺機能亢進症、45歳未満の早期閉経など、骨粗しょう症を招く疾患の有無
  5. ビール換算で毎日コップ3杯以上のアルコールを摂取するかどうか
  6. 大腿骨頸部の骨密度(またはBMI)

FRAX®骨折リスク評価ツール

骨粗しょう症の検査

当院でできる検査

骨密度検査(DEXA法)

骨密度は、骨の強さを判定する際の重要な尺度の1つです。
当クリニックでは、骨粗鬆症の治療ガイドラインで使用されている全身型の骨密度測定装置を導入し、この検査機器による骨密度の測定(DEXA法)を行っています。
骨密度を調べるため、6〜12ヶ月に1回のDEXA法による大腿骨、腰椎等の検査を受けるようお勧めいたします。

※DEXA(デキサ)法とは
DEXA法は、高低2種類のX線を測定部位に照射することにより、その透過度をコンピュータで解析し、骨量を調べる方法です。この方法では骨量を単位面積で割った値で算出し、骨密度として表します。測定する骨は、主に腰の骨、太ももの付け根部分の骨です。短い時間で済むうえ誤差が小さく、放射線の被爆量も少ないため、安全性に優れるというメリットがあります。このためDEXA法は現在、骨量測定における標準的な検査法として重視され、骨粗しょう症の精密検査や治療の経過観察、また骨折リスクの予測において非常に有用です。

骨代謝マーカーの検査

血液や尿によって骨代謝マーカーを調べることにより、骨吸収と骨形成のバランスがわかります。
このバランスが崩れると、骨は弱くなります。
また、骨吸収を示す骨代謝マーカーの高い人では骨密度の低下速度が速いため、骨密度の値にかかわらず骨折リスクが高くなっています。

X線検査

主に背骨のX線写真撮影を行い、骨折や変形が無いか、骨がもろくなっていないかを確認します。
骨粗しょう症と他の疾患との鑑別に必要な検査です。

身長測定

骨粗しょう症になると身長が縮みます。
一般的には、25歳の頃の身長と比べてどのくらい縮んでいるかを調べます。
25歳時より4cm以上低くなっている場合は、それほど低くなっていない人と比べ、骨折する危険性が2倍以上高いという報告があります。

骨粗しょう症の予防と治療

骨粗しょう症の主な治療法

食事療法

骨粗しょう症の治療や予防に必要な栄養素は、骨の主成分であるカルシウムやたんぱく質、および骨のリモデリング*に必要なビタミンD・Kなどです。
カルシウムは食品として700~800mg/日、ビタミンDは400~800IU/日、ビタミンKは250~300μg/日を摂取することが推奨されています。
これらの栄養素を積極的に摂りながら、しかもバランスの良い食生活を送ることが大切です。

骨粗しょう症の人が避けるべき食品は特にありませんが、アルコールやカフェイン、リンなどの摂り過ぎには注意しましょう。
お酒を飲みすぎて過度のアルコールを摂取すると、カルシウムの吸収を妨げたり、尿からのカルシウムの排泄量を増やしたりします。
カフェインもまた、カルシウムの排泄を促します。
リンを摂り過ぎると、血液中のカルシウムとリンのバランスを保とうとして骨の中のカルシウムが血液中に放出されてしまい、骨密度の減少を招きます。

積極的に摂りたい栄養素を多く含む食品

カルシウム
  • 牛乳
  • 乳製品
  • 干しえび
  • しらす
  • ひじき
  • わかさぎ
  • いわし
  • ししゃも
  • 大豆製品
  • えんどう豆
  • 小松菜
  • モロヘイヤ など
たんぱく質
  • 肉類
  • 魚類
  • 乳製品
  • 大豆製品 など
ビタミンD
  • あんこうの肝
  • しらす干し
  • いわしの丸干し
  • すじこ
  • さんま
  • かれい
  • うなぎ
  • 煮干し
  • 干し椎茸
  • きくらげ など
ビタミンK
  • 納豆
  • 抹茶
  • ブロッコリー
  • きゃべつ
  • サニーレタス
  • モロヘイヤ
  • しゅんぎく
  • おかひじき
  • 小松菜
  • ほうれん草
  • 菜の花
  • かいわれ大根
  • にら など

運動療法

骨は運動をして体重負荷をかけることで増加し、丈夫になります。
さらに筋肉を鍛えることで体をしっかりと支えられるようになり、バランス感覚も向上して転倒防止にもつながります。
骨量を増やすには、激しい運動をする必要は無く、散歩くらいでも効果がありますから、できれば毎日、あるいは週に数回でも、とにかく長く続けてください。

薬物療法

骨粗しょう症の薬は大きく3つに分類されます。

  1. 骨吸収を抑制する薬
    骨吸収がゆるやかになると、骨形成が追いついて新しい骨が骨の吸収された部位にきちんと埋め込まれ、骨密度の高い骨が出来上がります。
    • ビスフォスフォネート製剤
    • SERM(塩酸ラロキシフェンバゼドキシフェン酢酸塩)
    • カルシトニン製剤
    • デノスマブ
  2. 骨の形成を促進する薬
    • 活性型ビタミンD3製剤
    • ビタミンK2製剤
    • テリパラチド(副甲状腺ホルモン)
    • ロモソズマブ(抗スクレロスチン抗体)
  3. その他
    • カルシウム製剤

骨粗しょう症治療薬で用いられる薬

カルシウム製剤

カルシウムは骨をつくる主要な成分であり、欠かせないミネラルです。骨粗しょう症患者さんでは食事の摂取と薬の摂取量をあわせて1000mgが望ましいとされています。

活性型ビタミンD3製剤

食事で摂取したカルシウムの腸管からの吸収を増す働きがあります。また、骨形成と骨吸収のバランスも調整します。骨粗しょう症治療では古くから使われている薬です。

ビタミンK2製剤

骨密度を著しくは増加させませんが、骨形成を促進する作用があり骨折の予防効果が認められています。

ビスフォスフォネート製剤(内服・注射薬)

破骨細胞に作用し、過剰な骨吸収を抑えることで、骨密度を増やす作用があります。 経口剤、注射剤などがあります。服用の仕方として4週間に1回、1週間に1回、1日に1回などがあります。

SERM(サーム:塩酸ラロキシフェン、バゼドキシフェン酢酸塩)

骨に対しては、エストロゲンと似た作用で骨密度を増加させますが、骨以外の臓器(乳房や子宮など)には影響を与えません。

カルシトニン製剤(注射薬)

骨吸収を抑制する注射薬ですが、強い鎮痛作用も認められています。骨粗しょう症に伴う背中や腰の痛みに対して用いられます。

テリパラチド(副甲状腺ホルモン)

新しい骨をつくる骨芽細胞を活性化させ、骨強度を高めます。骨密度が非常に低いなど骨折リスクが高い患者さんに適した薬です。現在、1日1回患者さんが自分で注射をする皮下注射剤と、週2回自己注射を行うタイプ、週1回医療機関で皮下注射してもらうタイプとがあります。

デノスマブ(抗ランクル抗体薬)

破骨細胞の形成や活性化に関わるたんぱく質(RANKリガンド)に作用して、骨吸収を抑制します。6ヵ月に1回の皮下注射のため、継続しやすいというメリットがあります。

ロモソズマブ(抗スクレロスチン抗体)

骨吸収の抑制と骨形成の促進という2つの作用を併せ持つ、これまでにない新しい治療薬が発売されました。非常に効果の高い薬ですが、内科系合併症(心血管系事象)も報告されています。当院では内科と緊密に連携し、できるだけこのような合併症を起こさないように注意深く治療を行います。